東京谷中を拠点に、文化複合施設、飲食店、宿泊施設、建築設計業、教室事業を営んでいる「HAGI STUDIO」。810sシリーズを、すべての飲食店舗のユニフォームとしてご採用いただいています。お話を伺ったのは、飲食部門を統括する北川さん。鶯谷にあるホテルLANDABOUTの1Fで、北川さんが理想とする飲食店の役割のこと、HAGI STUDIOの事業のことなどをお聞きする中で、ユニフォームとしての810sの良さについてもお話しいただきました。
「飲食店は中継地点」
飲食店は「調理してサービスを提供する場所」という定義みたいなものがあったと思うんですが、5年くらい前からHAGISOで始めた「旅する朝食」がきっかけで、それだけじゃないなって気付きました。そのプロジェクトは、自分たち自身が全国のいろんな地域に行って、生産者の皆さんから直接食材を仕入れるという試みなんですが、活動していく中で気付いたのは、飲食店には食材と一緒に生産者の想いを伝え、逆に食べてくれる人のことを生産者に伝える「中継地点」のような役割が担えるんじゃないかということでした。○○料理が主役ではなくて、いろんな人やモノをつなげる場が主役。たとえばコーヒー一杯の原料でもいろんな人がつながってて、コーヒーカップをつくる過程でもたくさんの試行錯誤があって、いろんな人が関わっている。自分たちのお店が、各々がつながる中継地点になれたらいいなと思っています
「伝えたいから、知りたい」
お店でたくさんの人が触れるものは、なるべく細かいところまで知りたいと思っています。もっと言うと、それをつくっている人に会いたい。その根底には、自分たちの言葉で伝えたいっていう気持ちがあります。自分たちはメディアじゃないけれど、飲食店としてそれくらいの姿勢を持っていることによって生まれる関係やコミュニティが、新たなカルチャーを生むことができるんじゃないかって思います。個人的に思っているのは、知ってるほうが絶対に豊かだということ。身に着けているものとか好きなものが、こういう人がつくっているんだって分かると、幸福度が上がるんです(笑)。HAGI STUDIOには私と同じように背景を知りたい人が多いから、今回コロナになって「さて、どうしよう」となったときに、みんなで立ち止まって、あらためていろんな人の想いに気付いたり知ったりできたことで、自分たちがやっていることに自信が持てるようになったと感じています。
「『やりたいこと』ではなくて『場所』が先にある」
普通、事業を始めるときって、先に具体的にやりたいことがあると思うんです。たとえば、まず焼肉屋さんをやりたいっていうのがあって、どのエリアで、どれくらいの広さで、どんなコンセプトで、誰をターゲットにして、単価はこれくらいで、みたいな感じです。でもHAGI STUDIOの事業は、「空き家」だったり、その「場所」をどうにかしたいという人の気持ちから始まります。だからまずその場に行ってみて、大家さんのお話を聞いて、それならここにお惣菜屋さんがあったら街の人も喜ぶんじゃないかと想像して、じゃあ自分たちでお惣菜を勉強してお惣菜屋さんをやろうと考えます。場所から発想して、そこに自分たちが大切にしている価値観を足し算していくという感じ。そういう事業の始まりがほとんどで、時間と人と空間を大切にしています。
「疑問を感じていた飲食店の作業靴。興奮した810s」
作業靴って、なんでぜんぶ一緒で、選択肢の幅がこんなに狭いんだろうとずっと思っていました。うちでは食材や調味料などを扱っている問屋さんのカタログの後ろのほうに載っているリストから各々が発注していたんですが、そこから選んで履きたくないというスタッフもいました。機能的にも薄くて足首回りがパカパカしているものが多かったので、キッチンでは水がすごい入ってきちゃって。あと、数カ月履くと、底もパカパカしてきて(笑)、しょうがないからカカトを折ってサボみたいな履き方をしたりしてました。KITCHEは初めて見たときに「絶対買います!」って興奮したのを今でも覚えているんですが、見た目だけじゃなくて、足首のフィット感も、軽さも、クッション性もすごく良くて、長時間履いても疲労感がないんです。あと、飲食店は水場や油っぽい場所もあるんですが、滑りもまったく感じないです。
「凛とする作業靴」
靴なので人によって合う合わないもあると思うんですが、初めてKITCHEを履いたときに、なんか身が引き締まる感じがしました。人前に立つときは、いつも背筋を正しておかなきゃって思っているんですが、この靴を履くんだったらちゃんとしなきゃいけないと思わされたというか…。素直にそう感じたのは、810sには、まずは飲食店という場所で必要とされる機能がしっかりあって、そのうえで良いデザインが備わっているからかもしれません。
「810sに出会って、理想のユニフォームへの思いが強くなりました」
これは個人的な夢みたいなものですが、お店にひとつのクローゼットのようなものがあって、スタッフが自分で毎日着る服を選ぶ感覚でコーディネートできるようなユニフォームの在り方があったらいいなと思っています。「今日の自分はこれだ」みたいな感じで選べれば、モチベーションも上がると思うんです。飲食店のユニフォームって二通りあって、ひとつは専門会社さんがつくっているもので、もうひとつは飲食店がオリジナルでつくっているもの。専門会社さんがつくっていると、きっといろんなリサーチをされているのもあって、機能性はあるけど実際に働く人にとってのデザイン性や実用性がなかったり、飲食店がつくっているとデザイン性も満たしたポケットが付いていたりするけど、機能性がなかったり。ぜんぶ満たされている810sを使っていると、上に着る服も欲しくなってきました。いつか上に着るものをHAGI STUDIOでつくって、上下でコラボレーションできたらいいななんて勝手に思っています(笑)。
「プロユースを、デイリーユースに。」というコンセプトでつくった810sが、飲食店というプロユースの現場で、ものづくりの背景とともに大切に履かれている。その現実が、ムーンスターの靴は「使われてこそ価値がある」ことをあらためて教えてくれました。自分たちが信じているものづくりをつづけていれば、思想はどこかで重なり、それぞれの場所で少しずつ形を変えながらも、大切な部分は残しながら活動や文化として育まれていく。HAGI STUDIOさん、北川さんとのつながりを、これからも大切にしていきたいと思います。