つながる
私とムーンスター

都心から電車で約1時間。佐倉駅から歩くこと約10分。こんなところにセレクトショップが?と思うロケーションに「sauk」はあります。地域柄、様々な年代のお客様が来店される店内は、友人の家にでも遊びに来たような居心地の良い雰囲気。地元で生まれ育ち、たくさんの常連さんを抱えるマネージャー/バイヤーの櫻井さんが、今回の主役です。

「私の前を歩くな、私が従うとは限らない。私の後を歩くな、私が導くとは限らない。私と共に歩け、私たちはひとつなのだから」

これは、ネイティブアメリカンのソーク族の言葉です。お店の名前を考えているときに、スタッフの頭文字を並べて「sauk」で検索をかけて出会ったのが、この言葉でした。いい言葉だなあと思ったのと同時に、自分が大切にしている「お客様の上に立っても、下に立ってもダメ。同じ目線でいたい。」という姿勢にぴったりだったので、店名にしました。また、「ソーク=soak」という英語には「浸透する」という意味もあるので「人や生活に浸透するような空間や商品の提供」を、お店のコンセプトにしています。

「10代の方にも、70代の方にも、長く付き合える相棒に出会ってほしい」

saukのお客様に共通するのは、デザイン性だけにこだわらないことや、安価で買えるものを消費する今の流れに乗れない、乗りたくないということだと感じています。流行っているものがあるからではなくて、ここに来て、話を聞いて、試着をしてみて、自分にピタッとくるもの、長く使いたいと思えるものを探したいという方が多い印象です。上の年代の方にとっては、百貨店の売り場のように担当が付いて、じっくり接客してもらえる場所が少なくなってきていることも、うちのお店を気に入ってくださっている理由のひとつかもしれません。そういうお客様の中には「友だちには教えたくないのよ」と言う方もいて嬉しいんですが、「どんどん教えてください」とお願いしています(笑)。

「なんでこの価格なのか?を、ちゃんと伝えたい」

佐倉は都心とは違って、たとえば2万円のシャツを簡単に買っていただける場所ではないので、価格と商品の質が合っていることが大切だと思っています。だから買い付けに行っても、その場でパッと決めて帰ってくるわけではなく、「なんでこの価格なのか?」というのを自分で納得できるかをよく考えます。結果的にセレクトするのは、「あ、これ可愛い!」って反射的に思って手に入れて終わってしまうものではなく、ブランドの背景を知っていく過程で好きになれるもの。背景や質も含めて、この価格なんです、とお話できることを大切にしています。

「ムーンスターには、履かない理由がありません」

今まで色々なスニーカーを履いてきましたが、どこかが痛くなるとか、ゴムがすぐ剥がれちゃうとか、何かしらのストレスがありました。それに比べてムーンスターは「自然に履ける」。履き心地がいいというよりも、履いていて疲れない、変なことが何もないというのが、ムーンスターの良いところだと感じています。丈夫で疲れないこと以外にも、脱ぎ履きのしやすさも、家から出るときに忘れ物の多い私にはありがたいです(笑)。特に大好きなGYM CLASSICは「これはほんとにいいぞ」とあちこちで言いふらしているんですが、仕事が終わって帰宅すると、我が家の分だけでなく妹夫婦のGYM CLASSICも玄関に並んでいて、どれが誰のか分からなくなったりしたこともありました…。

「美容師の方や、外反母趾の方にもおすすめしています」

ムーンスターは日本人の足に合うようにつくられているというだけあって、なかなか合う靴がないというお客様も、1カ月履いただけで良さが分かると言ってくださいます。立ち仕事の時間が長い美容師の友だちにもファンが多いのですが、驚いたのが、外反母趾で悩まれている方にも、リピートされる方がいらっしゃるということ。特に定番モデルのGYM CLASSICは、履き潰したらまた同じものを、という方も少なくありません。私もその一人なんですが。

「ムーンスターがなくならないように、たくさん売りたい」

私自身、長くつづいているものや、歴史を重んじているものが好きなんですが、今、コロナの影響でいろんなものがなくなってしまうのではないかと感じています。好きなことやものが自分の暮らしの中に存在していること自体が、ありがたいこと。それがなくなってしまうのは困るので、自粛期間中はいつも行っているお店でテイクアウトしまくりました(笑)。ムーンスターは、個人的にもsaukというお店にとっても大切なブランドですし、何も変わらないでこのままで存在していてほしい。だから自分のできる範囲で、一人でも多くの人にご紹介していきたいと思っています。

意志がある人。というのが、お話を伺ってみて受けた櫻井さんの印象でした。でもだからといって、自分の考えを人に押し付けたりはしない「お客様と同じ目線」が、年代も立場も違うお客様から櫻井さんが愛されている理由なのかもしれません。ムーンスターは福岡・久留米という街で生まれ、地域やコミュニティを大切にしてきた会社です。私たちの靴が、都会ではなく、佐倉という街で、地域の人に丁寧に届けられていることに、あらためて感謝したい。そう感じた取材になりました。