静岡市清水区の巴川沿いに佇む用品店「S&K Household(新店舗:糸デンワ)」。ご自身も愛用しているムーンスターは、2014年のオープン以来、ずっと取り扱われているとのこと。少しお話しただけでも、独特な雰囲気と、明るい性格が感じられる鈴木さん。共同オーナーでもあるご主人と、一点一点大切に選ばれた服や雑貨が調和する空間でお話しをお聞きしました。
「店名につけた『Household』は、日用品を扱うお店として」
お店を始めたときは服だけでなく、お皿など、日々使ういろんなものを扱っていました。でも、うちの人も私もとにかく服好きなので、しぜんと服を選んでしまうようになってしまって、今のお店の品揃えになりました。
「静謐な美しさと確かな質を持つ衣服」
流行りものがそのまま定番になることもあるけれど、起伏が激しくないもの。10年前の服なんだよって言われても、スッと受け入れられるもの。「とぅ~ってした感じ」で、一定の美しさを保ち続けられるもに魅力を感じます。お店のコンセプトを噛み砕いて言うと、そんな感じです(「とぅ~ってした感じ」ってわかりにくくてすいません 笑)
「会社員時代に、お給料のほぼすべてを服につぎ込んで気づいたこと」
主人も私も元々はサラリーマンをしていて、脱サラしてお店を始めたんですが、服をたくさん買っていた中で気づいたんです。持っている服の中でも「あぁ、やっぱりこれは使える」とか「こっちはそのときのテンションだけで買ったな」とか。そこで学んだことを、いまお店で出しているという感じです。今は自分が身に着けるものでも、長く使っているもの、長く使っていきたいものが多いかもしれません。
「GYM CLASSICのBLACKMONOだけは、もう手放せません」
普段は革靴を履くことが多く、スニーカーの出番はあまりないのですが、「ジムクラ」だけは特別です。60年代のトレーニングシューズの作りをとり入れていて、シルエットを綺麗に保つことができる丈夫な仕様。ずっと行きたいと思っていてまだ行けていないのが残念なんですが、久留米の工場の職人さんによる「作りの良さ」が魅力です。あと、細かいところだと、シューレースがコットンなのもポイントです。コットンは馴染みがいいし、なんというか、テヤテヤしていないのがいいんです 笑。お客様にもどうしても力を入れてオススメしちゃうんですが、靴を持ったときには重さがあるので首を傾げる方も多いですが、試着されるとその履きやすさと足運びの良さに驚かれて、購入してくださる方がたくさんいらっしゃいます。私みたいにリピートする方も多いです。
「5キロ歩いて、そのまま店頭に立てる靴」
ハイテクスニーカーなどとは違って素朴なつくりに見えますが、ソールのゴムが強く、歩きやすいので足が疲れません。毎朝、自宅からお店まで5キロくらい歩いているんですが、ジムクラを履くときは、履きかえずお店に立つことができます。履き込んで感じることは、たくさん歩いているのに、ソールの減りが少ないこと。今日履いているLITE BALLETもそうなんですが、ムーンスターの靴は、シルエットが綺麗で華奢に見えるのに、あなた案外しっかりものなのね。と、履くたびに感じます。
「一生好きでいられるか。朝起きて、見て、気持ちいいか」
最近は、それくらいの気持ちにならないと、ものを買わなくなりました。実は私自身は元々消費が好きなんです。でもうちの人は、ものが溢れるのを嫌うし、見て気持ちいいものしか置きたくない人だから、十数年一緒にいると、だんだん私もそうなってきて・・・。服を選ぶときには、5年、6年経った後も好きでいられるかって考えるようになりました。何年か前に、一個買ったら一個捨てるというお客さんに出会って、ものを売っている身としても、一個買って一個捨てるに値するものを売らないといけないな。と、思うようになりました。
「夫と猫と、このまますぅ~っと暮らしていきたい」
今回、コロナのことがあってお店を休んでいる時期がありました。そのときに気付いたのは、夫と猫が健康で暮らしてくれてるだけで幸せなんだなぁてことです。お金はあるに越したことはないけど、この状態で大儲けしなくても、すぅ~といけるのがいちばんいい。自分のそばにいる好きな人と、愛する猫と暮らしていけたらいいなぁって思います。
取材中、店先から鈴木さんを呼ぶ声がして、ちょっと中断した時間がありました。聞くと、鈴木さんを呼んだのは、お店の二軒隣にある喫茶店で働くおばあちゃん。足が悪く、靴のマジックテープが自分で留められないので、毎朝、鈴木さんがマジックテープを固定してあげているとのこと。ご主人と猫、そして静謐な美しさを愛する人の、肩の力が抜けたやさしさが垣間見えた一コマでした。そんな鈴木さんの暮しの一部になれて、ムーンスターは幸せに思います。